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インタビューInterview

一人では解決できない問題でも、個々の力が集まれば克服できる!

2017/01/11

伊藤 佳江 税理士 全国女性税理士連盟 会長

「60周年に向けて、めざせ会員2000名!」

――全国女性税理士連盟(女税連)が設立された経緯からお聞きします。
 女性税理士の場合、仕事の悩みだけでなく、家事や子育てや介護など、日々の生活面でもいろいろと悩みを抱えているものです。しかし、誰かに相談したくても、昔は女性税理士が非常に少なく、税理士会などの集まりに参加しても、女性が一人ということも珍しくありませんでした。また、仕事の面においても、時代的に「女性だから」との見方をされる傾向がありました。そこで、女性税理士が互いに研鑽を図り、親睦を深め、会員の社会的地位の向上と権益の擁護を目的に、昭和33年に女税連が誕生したわけです。


――最近は女性税理士の数も増えていますね。
 平成28年3月末現在の税理士登録者数は7万5643人で、このうち女性税理士は1万859人、全体に占める割合も14%を超えています。これは、税理士試験の科目合格制が、結婚・出産・育児・介護といった女性のライフステージに合わせやすく、また、税理士という職業が女性の特性を発揮できる証拠ではないかと思っています。今や税理士業界においても、女性の活躍が業界全体の活性化に繋がっているといっても過言ではありません。今後、日本で唯一の女性税理士の全国組織である女税連の活動がさらに必要不可欠なものになってくると思います。


――女税連ではどのような活動を行っているのでしょうか。
 女性税理士だからこそできる提言や社会貢献のための活動を行っています。具体的には、税法では配偶者控除の廃止、所得税法56条の廃止、消費税の複数税率反対、民法では選択的夫婦別氏制度等の要望提言、関連法規に関する研究活動、出版活動、シンポジウム、研修会活動などを行っています。特に、研修会活動は、東西両支部において月例会やブロック会など、年間を通じて積極的に開催しています。


――研修会の講師陣は非常に充実していますね。
 人気の先生方に講師をお願いできるのは、女税連のネットワークの強さだと思います。女税連の研修会に魅力を感じて入会される方も少なくありません。東日本支部では、春と秋に連続研修会を開催し、西日本支部では、ブロックごとに研修会を開催しています。いずれも、認定研修のため研修受講時間に算入されるので、男性の税理士も参加されています。是非、会員以外の方々にも一度研修会に参加して頂きたいと思いますね。


――女税連といえば、成年後見制度を熱心に勉強されてきました。
 民法の改正によって2000年4月1日に「成年後見制度」が施行されましたが、当初から女税連ではその重要性を認識し、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートにお願いして研修会を開催していただきました。その後も独自の研修会や海外視察などを行い、日税連に対して成年後見支援センターの設立も早くから要望してきました。現在、日税連や全国の単位会に成年後見支援センターが設立されていますが、リーガルサポートの研修会を受講した会員の方々が、それぞれの地元で相談員として活躍し、実際に後見人となって頑張っています。


――伊藤会長も成年後見制度にまつわるサポートをされていますか。
 はい。現在私が抱えている相続案件のうち2件は成年後見が絡んだものです。最近は、高齢の夫婦が互いに支え合って暮らしている家庭もたくさんあります。もし、奥さんが認知症になった場合、旦那さんとしてはご自身が亡くなった後の財産の管理、介護費用の捻出などが心配になるでしょう。関与先がこのような状況になって相談を受けたとき、税理士として成年後見制度という選択肢があることをアドバイスできなければ、「他の人に聞きますので、先生は税金のことだけお願いします。」などと蚊帳の外に追いやられてしまいます。


――成年後見制度に関する勉強が欠かせないというわけですね。
 すべての税理士が一から十まで完璧に知識を身に付ける必要はないと思います。大事なのは、これまで長年一緒にやってきた関与先に対し、顧問税理士として「大丈夫、私が応援します」などと一緒に問題に立ち向かっていくことではないかと考えます。そもそも成年後見の相談を受けた場合、税理士一人ですべて対応する必要はありません。専門家ごとに得意分野がありますので、その方々と協力すればいいわけです。分からないことがあれば、税理士会の成年後見支援センターに聞くこともできます。ただ、やはり税理士としても基本的な部分は勉強しておくべきではないでしょうか。


――女税連には長い歴史があります。伊藤会長にとって女税連とはどんな組織でしょうか。
 地元の地域で、そして全国で語り合い、悩みや喜びを共有することができる素晴らしい組織です。一人では解決できない問題を皆で共有し、克服してきた歴史が女税連にはあります。「女税連で受けた恩は女税連で返す。」これは、初代会長の加藤愛子先生のお言葉です。私は本当に女税連からの恩を感じており、自身の結婚後、問題なく旧姓使用で税理士業務を行えたのは、女税連の先輩方が旧姓使用をいち早く働きかけて頂いた結果で、本当に感謝しています。同時に、一人一人では解決できない問題でも、女税連で一丸となることで大きなパワーに変わり、高い壁でも乗り越えることができるという証明だと感じています。


勤務税理士のレベルアップにも最適

――女税連には、勤務税理士の会員もいらっしゃいますか。
 結構いますよ。女性の勤務税理士が、女税連に入らないのは、非常に勿体ないことだと思います。事務所内の研修も有意義だと思いますが、勤務税理士が女税連に入会してレベルアップすれば、事務所にとって大きなプラスになります。女税連のネットワークを活かし、全国の様々な情報を入手することもできます。その点に気づいている所長先生は、女性の勤務税理士を積極的に女税連に送り込んでいますね。女税連は税理士登録の有資格者も入会できますので、まだ登録していない方、一時お休みしている方、税理士会を退会した方も会員になれます。税理士会に入会していないと情報が入りませんので、例えば産休で一時登録を保留している方なども女税連でホットな情報交換ができます。


――今年は設立60周年です。最後に伊藤会長からメッセージをお願いします。
 女税連には、永年の歴史があります。歴代の研究や要望をさらに発展させて広く社会に時宜を得た提言・意見発表を行っています。これからも会員の声を汲み上げ、税理士業界のみならず納税者全体の利益にもつながる施策を積み上げていきたいと考えています。引き継いだ襷を次の方につなぐべく「60周年に向けて、めざせ会員2000名!」のスローガンのもと、会員一丸となって進んでいきたいと思います。

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