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税務の勘所Vital Point of Tax

東京高裁 仕入税額控除めぐる裁判で過少申告加算税を取消し

2021/09/15

 入居者付き賃貸マンション転売に係る消費税の仕入税額控除をめぐり争われた裁判で、東京高裁は令和3年4月21日、異例判決を下した。仕入税額控除そのものについては、国側の主張を認めて納税者敗訴となったが、今回のケースにおいて仕入税額控除の取扱いが変更されたことを国側が納税者に周知徹底する必要があったのに、それをしていなかったとして落ち度を指摘。過少申告加算税の賦課決定を取消す判決を言い渡した。

【1. 仕入税額控除をめぐる問題】

 消費税は、事業者が課税売上等にかかる消費税から、課税仕入れ等にかかる消費税を控除して、納める税額または還付する税額を計算する(消費税法30条1項)。

 仕入れにかかった消費税が全額控除できるのは、課税売上高が5億円以下、課税売上割合が95%以上のとき。課税期間中の課税売上高が5億円超または95%未満の場合は、課税売上に対応する課税仕入れ等に係る消費税額だけを控除することになる。

 ところで、入居者付きの賃貸住宅を仕入れた場合、建物部分の転売で受取る消費税のほかに、「住宅の貸付に伴う家賃」という消費税が非課税の売上もある。このように課税売上と非課税売上が混在するときは、消費税法30条2項に従い、「控除すべき税額」を制限付きで計算することになる。

 その計算方法のひとつが、課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ等の税額の合計額に、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算した金額を加算する「個別対応方式」によるものだ。

 これは、①課税売上のみに要する課税仕入れ等に係る消費税額、②非課税売上のみに要する課税仕入れ等に係る消費税額、③課税売上と非課税売上に共通して要する課税仕入れ等に係る消費税額に区分されている場合に可能な計算方式となっている。

〇個別対応方式の控除仕入税額の計算式
   控除仕入税額=①の消費税額+③の消費税額×課税売上割合

 今回の裁判の争点は、入居者付きで買った賃貸マンションの仕入れの用途区分が、個別対応方式の仕入税額控除の計算上、「課税資産の譲渡等のみに要するもの」となるのか、それとも「譲渡資産の譲渡等と、その他の資産の譲渡等に共通して要するもの」となるのか。

【2. 事案の概要】

 控訴人である不動産業者は、各課税期間において、その全部または一部が住宅用として賃貸されている建物を購入。1)平成25年12月課税期間は79物件、2)平成26年12月課税期間は90物件、3)平成27年12月課税期間は175物件。不動産業者は引渡日以降の賃貸料を収受していた。

 これを受けて不動産業者は、各課税期間の消費税について確定申告を行った。控除対象仕入税額については、いずれも個別対応方式を用いて、各課税仕入れは「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分されることを前提として下の表の申告欄のとおり総額約2億1121万円の還付申告をした。

 C税務署は平成29年7月、各課税仕入れは「共通課税仕入れ」に区分されるべきであるとした上で、表のとおり本税総額約2億2809万円の更正処分と、約8332万円の過少申告加算税を課税する処分等を行った。

 東京高裁は、この争点に関して一審判決を是認。また、同様の争点で争われ、納税者が勝訴した令和2年9月3日東京地裁判決(エーディーワークス事件)において、用途区分について最終的な取引等の目的などにも配慮して「課税仕入れ等を行った日を基準にどのような取引のために当該課税仕入れを行ったかを認定して行うべき」と指摘があった点を否定し、「事業者に課税資産の譲渡等の目的があり、その他の資産の譲渡等の目的(賃貸料を得るなど)がなかったとしても、課税仕入れを行った日において将来その他の資産の譲渡等が確実に見込まれ、その他の資産の譲渡等に要する課税仕入れとなることが明らかである場合には,共通課税仕入れに該当すると解釈するのが相当である」と判断した。

【3. 加算税が取消された理由】

 期限内に申告していても、税務調査などで納めるべき税額が不足していたり、還付税額が多過ぎていることが明らかになった場合には、修正申告を求められたり、税務署による更正が行われる。この場合に賦課されるのが過少申告加算税だ。税額は、足りない分の10%相当額が原則。ただし、足りない税金が当初の申告納税額と50万円とのどちらか多い金額を超えている場合、超えている部分については5%増しになる。

 ただ、修正申告・更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて「正当な理由」があると認められる場合は、その「正当な理由」があると認められる事実に基づく税額は控除される(国税通則法65条4項)。

 今回の事件では、転売するために取得した入居者付き賃貸マンションに係る消費税の控除対象仕入税額が、仕入れ時に支払った全額ではなく、制限される取扱いに変更したことについて、裁判所は、国側が納税者に周知徹底する必要があったのにしていなかったと認定。納税者が当初申告において仕入れ時にかかった消費税を全額控除したことに「正当な理由」があると認めている。

 裁判所が認定した事実関係の概要は次の通りだ。

(1)平成9年頃、賃貸中マンション購入費用事例について、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」との回答をしており、税務当局が、個別対応方式における用途区分において、主たる目的または最終的な使用目的を考慮して用途区分を判定したとも理解し得るような事実が認められる。

(2)その後、税務当局は、本件と争点を同一にする平成17年裁決、平成22年裁決、平成24年裁決において、用途区分を「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」であると主張して、これが是認されており、遅くとも平成17年頃には上記回答の見解を変更したことが窺われる。

(3)税務当局として、従来の見解を変更したことを納税者に周知するなど、これが定着するよう必要な措置を講じるのが相当であったと解されるにもかかわらず、そのような措置を講じているとは認められない。

(4)平成9年以降の事例における回答の変更や裁判例、裁決、文献および雑誌の記事において共通課税仕入れに区分されることが示唆されたり、示されたりしているが、なお裁判においてその適法性は争われており、上記必要な措置が講じられたものと評価することもできない。

 こうしたことから東京高裁は、「税務当局の従前の対応例、これを根拠とする紛争が継続している事情の下では、各確定申告において、控訴人(不動産業者)が、各課税仕入れを「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分した上で控除対象仕入税額の計算をしたことについては、真に控訴人の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお、控訴人に過少申告加算税を賦課することが不当または酷になるというのが相当である」として一審判決を覆し、「確定申告における申告額が過少であったことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるということができ、各賦課決定処分は違法」としている。

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