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税務の勘所Vital Point of Tax

税賠保険 「うっかりミス」で損害賠償 土地評価のミスも・・・

2018/08/21

 ㈱日税連保険サービスが公表している「税理士職業賠償責任保険」(税賠保険)の事故事例を見ると、「うっかりミス」によるものが大半を占めている。その中でも非常に多いのが、消費税の届出書の提出を失念するケースだ。

 例えば、A税理士は、依頼者から来期より輸出が増えること、固定資産の取得があることなどの説明を受け、消費税は還付になる可能性がある旨を伝えていた。依頼者は消費税簡易課税制度選択届出書を提出しており、当該事業年度は基準期間の課税売上高が5000万円以下であったことから、還付を受けるためには、消費税簡易課税制度選択不適用届出書の提出が必要だった。しかし、A税理士は、簡易課税制度が選択されていることの確認を失念し、期日までに提出しなかった。結果、還付不能となった消費税額について損害賠償請求を受け、約570万円の保険金が支払われている。

 所得税の「うっかりミス」では、B税理士が確定申告書を申告期限の平成28年3月15日に郵便局から発送。その際、ゆうパックは郵便または信書便に該当すると誤認して利用したところ、税務署に到着した平成28年3月16日が提出日となり、期限後申告で「65万円の青色申告特別控除」などの規定が適用できず、損害賠償請求を受けて約220万円の保険金が支払われた。

宅地を路線価で評価したら市街化調整区域内だった!?
 
土地評価のミスによる損害賠償請求も目立つ。例えば、C税理士は、依頼者の父親の相続税の申告において、路線価評価と倍率評価が混在する地域の宅地について、路線価が付されていたので路線価方式で評価したが、その後、市街化調整区域内の宅地であったことから倍率方式で評価すべきだったことに気付いた。すでに更正の請求期限を徒過していたため、過大納付の相続税額について損害賠償請求を受け、約570万円が保険金として支払われた。


 また、D税理士は、相続人である依頼者から被相続人の相続税申告業務を受任し、平成27年9月に相続税申告書を提出した。被相続人は複数の土地を所有しており、そのひとつは「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用が受けられる宅地だったが、D税理士は特例を適用せず、申告期限後に依頼者から質問を受けて失念したことに気付いた。この事故では、約470万円が保険金として支払われた。

事務所名の不審なメール原因調査費にも保険適用
 税賠保険の「情報漏えい担保特約」で保険金が支払われた事例もある。E税理士は、複数の顧客から税理士事務所名で不審なメールが届いたとの報告を受けた。そこで、事務所内で使用しているパソコンのウィルス感染など、何らかの理由で顧客情報が漏えいしたおそれがあるため、外部業者へ原因調査を依頼した。その結果、ウィルスには感染していたが、顧客情報の漏えいはしておらず、顧客への賠償は発生しなかったが、情報漏えい対応としてすべての顧客にお詫び状の送付やお詫びの訪問をするとともに、外部業者に原因調査費用などを支払っており、事故対応費用として約140万円が保険金として支払われた。


相続時精算課税を使った自社株贈与を提案したら・・・
 
一方、保険金が支払われなかった事例もある。F税理士は、事業承継の一環として、依頼者の父が所有する株式(取引相場のない株式)を相続時精算課税により父から依頼者へ贈与することを提案。その後、株価が大幅に下落し、父の相続が発生した。依頼者は、「税理士から提案されなければ株式の贈与はしなかった」と主張し、相続時精算課税時の株価と相続発生時の株価との差額に相当する相続税は、税理士の責任により発生したものとして2000万円の損害賠償請求を行った。この事故は、将来の予測の過誤に起因する損害であり、保険金支払の対象には該当しないと判断された。

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