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税務の勘所Vital Point of Tax

役員退職金の損金算入めぐる争い 当局は元代表のLINEを証拠に!?

2021/08/16

 退職したはずの代表取締役が、その後も会社の事業運営上の重要事項に関与していたとして、会社が支給した退職金7億2千万円余りの損金算入を国税当局が否認したことから争いになった国税不服審判所の事例が注目されている(令和2年12月15日裁決)。

 この争い、なぜ注目されているかというと、元代表者によるLINEのやり取りを国税当局が証拠として挙げてきたためだ。

 問題となったLINEは、平成24年11月30日の退職から1年10カ月後となる平成26年9月30日以降の期間に発信されたもの。更正処分した国税当局は、会社関係者の申述や元代表者が発信したLINEの画像データを出力した資料から「元代表者は、辞任後においても従来どおり会社の経営に従事しており、会社のみなし役員に該当するから、請求人(会社)を実質的に退職したとは認められない」と主張していた。

 みなし役員とは、取締役等の法的な地位を有していない者でも「法人の経営に従事している者」を法人の役員に含めるというもの(法人税法第2条第15号)。審判所は「『法人の経営に従事している』とは、法人の事業運営上の重要事項に参画していることをいうと解される」ため、関係者の申述の内容やLINEのやり取りを分析し、経営会議への参加状況、それ以外の指示命令、金融機関への対応、新規事業の決定について元代表者の関与を検討した。

 その結果、審判所は、たとえば指示命令について「LINEには、元代表者から現経営サイドに対する法人グループ間の資金移動に係るものなど様々な指示ともとれるようなやりとりがみられ、当該期間に、(中略)元代表者が、法人グループ全体のいわゆる実質的なオーナーとして振舞っていたことはうかがわれる」としながらも、「法人グループのいずれの法人の業務に係るやりとりなのか不明なものが多くみられ、上記の指示等が会社の事業運営上の重要事項に係る指示かは不明であるところ、辞任の翌日(平成24年12月1日)から本件LINEの開始日の前日(平成26年9月29日)までの期間において、元代表者が会社の業務に関して具体的な指示等をしたことおよびその内容や方法を示す客観的な証拠はない」と認定した。

 審判所は、このほかの点でも、LINEに決定的な具体的関与を示す証拠が認められなかったとして、代表取締役の辞任後も継続して会社の事業運営上の重要事項に係る具体的な指示命令および決裁をしていたと認めることは困難として、国税当局の更正処分等を全部取り消し、納税者に軍配を上げている。

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