KSD事件が公益法人の歴史に残したもの
2018/05/10
公務員や政治家が賄賂をもらって便宜をはかることを受託収賄といいます。わが国で最も有名な受託収賄事件は、総理大臣の田中角栄氏が罪に問われたロッキード事件です。そのロッキード事件ほど有名ではありませんが、KSD事件も、公益法人が起こした受託収賄事件として騒がれ、公益法人の歴史に大きな汚点を残すことになった事件です。
KSDは、正式には財団法人ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団といって、中小企業の経営者向けに月会費2,000円で共済事業を営んでいました。財団法人は、理事長の古関忠男が1964年に創立したものでしたが、信用金庫や銀行などの金融機関と業務提携して、中小企業が融資を申し込みに行くとKSDへの入会申込を勧められるなどの仕組みを作り上げて、2000年ごろには約280億円もの巨額資金を集める事業団体に成長していました。
その頃になると古関理事長は、この財団法人を私物化して豪華なKSD会館を建て、自宅として使ったり、親しい女性歌手の生活費を出したりしていました。また、財団の資金をバックに政治献金や工作資金をばらまいたりして、すっかり政界のタニマチ気取りだったといわれています。こうした古関理事長の乱脈経営や政界工作などが表面化して、業務上横領、贈賄、背任容疑で逮捕されたのが2000年11月のことでした。これが政界をも巻き込んだ汚職事件へと拡大していきます。
2001年3月1日、参議院議員の村上正邦元労相が逮捕されました。村上元労相は、1996年1月25日開催の参議院本会議の代表質問で、KSDが進めていた「ものつくり大学」を取り上げて、その設立を支援し、見返りに現金や事務所家賃の肩代わり等、総額5,000万円の利益供与を受けたというものでした。村上正邦の秘書だった小山孝雄参議院議員も、参議院労働委員会などでKSDを後押しするような質問をした見返りに、2,000万円の利益供与を受けたとして逮捕されました。その他にも、KSDは、自民党参議院選挙比例代表名簿の登載順位を上げるための署名集めや、関連団体を経由した自民党の党費立替・迂回献金などが行われたこともわかっており、KSD側から自民党サイドに流れた資金の総額は20億円にも上るのではといわれています。
このKSD事件が契機となって、公益法人制度改革の機運が一気に高まり、新しい公益法人制度が求められるようになりました。