緑資源機構事件で、緑は汚れた色になった。
2019/08/08
今から12年前の2007年というとアップルのiPhoneが世界に初めて登場した年ですが、それがその後の世界の経済を牽引するような製品になると、誰が想像したでしょう。
日本では、この年の5月に関係者三人が次々と自殺する事件が起きています。独立行政法人の緑資源機構をめぐる談合事件でした。
緑資源機構は、1955年に設立された「農用地整備公団」と「森林開発公団」を統合して1999年に設立された特殊法人「緑資源公団」を前身としています。林道の整備や水源林の植林などを主な事業とするものでしたが、特殊法人改革が叫ばれ、独立行政法人化への流れの中で、2003年に独立行政法人緑資源機構として再スタートしました。
林道整備事業の受注先である公益法人やコンサルタント会社は、林野庁や緑資源機構からの天下りを受け入れ、緑資源機構が裏で調整する典型的な「官製談合」が行われていました。2007年5月24日、公正取引委員会の告発を受けた東京地検特捜部によって独占禁止法違反で緑資源機構の理事や受注先の担当者など6名が逮捕されます。しかし、疑惑は独占禁止法違反にとどまりませんでした。浮かび上がってきたのは、受注業者らの政治団体から当時の松岡利勝農林水産大臣への裏献金の事実でした。
松岡大臣に対する包囲網は次第に狭まっていました。すでに、5月18日には松岡大臣の地元事務所関係者の損保代理店社長が自宅で自殺しているのが発見されていました。松岡大臣はジリジリと追い詰められていきます。そして10日後の5月28日、松岡利勝農林水産大臣が議員会館で首を吊って自殺しているのが発見されました。その翌5月29日には、疑惑に関連して捜査を受けていた前身の森林開発公団理事で強い影響力を持っていたとされる山崎進一氏が自殺しているのが発見されました。
緑資源機構をめぐる談合事件は、2007年11月の東京地裁で有罪判決を受けます。判決では、「血税を無駄に費やす官製談合を続け、国民の犠牲の上に自分たちの組織の温存を図ろうとした恥ずべき犯行」と断罪されました。翌2008年3月に緑資源機構は廃止され、国民の前から姿を消しました。