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第4回:議決権制限株式を活用した対策   

2021/06/01

1.会社オーナーの財産構成と遺産分割

 会社オーナーの財産に占める自社株式の割合が高いと、後継者である相続人と会社経営に関与しない相続人との間で、遺産分割のバランスが取れないケースがあります。そのような場合には、やむを得ず、会社経営に関与しない相続人にも自社株を相続させざるを得ないこともあります。

 会社経営に関与しない株主がその会社の株式を相続等により取得したとしても、その株式をすぐに会社が買い取ることができれば、会社経営に問題は生じないと考えられます。しかし、会社法の財源規制、会社の資金繰り、その株主が株主でいることを希望している等の理由で、買い取りが難しい場合もあります。

 会社経営に関与しない株主が株式を継続保有することで、最も懸念されるのはその株主が有する議決権の問題でしょう。保有する株式の割合にもよりますが、その株主が後継者と対立した場合には、会社経営が混乱してしまう可能性も生じます。

2.議決権制限株式の活用

 議決権について懸念がある場合には、種類株式の1つである、議決権制限株式を活用することが考えられます。議決権制限株式はその名の通り、議決権を制限した株式であり、すべての議案について議決権を有しない無議決権株式とすることも可能です。以下、事例により議決権制限株式の活用法を解説します。

3.事例による議決権制限株式を活用した対策

【事例】 私には後継者である長男のほか、会社経営には関与していない長女がいます。会社経営の安定性を考えると、後継者である長男にすべての自社株を譲りたいと思っていますが、自社株以外に大きな財産もなく、長女に渡す財産が少なくなってしまうことを懸念しています。このような場合で種類株式を活用する方法があると聞きましたが、どのような方法でしょうか。

【解説】
(1)議決権制限株式の活用
 上記の事例では、オーナーの保有する株式のうち、将来的に長女に相続させる株式については、生前にあらかじめ無議決権株式に転換しておき、長女にはその無議決権株式を相続させるということが考えられます。

 これにより長女にも自社株を含む財産を相続させ、長男とのバランスを取ることができる一方で、長女が保有する株式については議決権をなくすことで、会社経営が混乱しないような仕組みを作ることが可能です。

(2)議決権制限株式活用における留意点
 長女の側からすると、いくら株式を受け取ったと言っても、議決権がない株式では、納得しないケースもあります。このような場合、議決権を制限する代わりに、普通の株式よりも配当を多く受け取ることができる株式(配当優先・無議決権株式)にする等の対応をしているケースが見られます。

 長女からすれば、会社経営(議決権)に興味があるというよりも、配当を得られる財産としての価値に興味がある場合の方が多く、配当を多く受け取る権利があることで理解を得やすくなるでしょう。

【今回のまとめ】
 自社株以外の財産が少ない場合には、遺産分割のバランス上、会社経営に関与していない相続人(3の事例の場合は長女)にも一定の自社株を渡さざるを得ない場合もあります。

 そのような場合には、会社経営に関与していない相続人に渡す株式について、議決権を制限することにより、後継者(3の事例の場合は長男)による会社経営の安定性に影響が及ばないようにすることが考えられます。

(税理士法人タクトコンサルティング 税理士・公認会計士 小野寺太一)

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