所得税の損益通算
2025/12/23
今回は令和7年12月の配信予定となります。年が明けますと、本年も所得税の確定申告の時期がやってまいります。そこで令和7年分の所得税確定申告を行うに際して、損益通算の注意点について今回はまとめてみたいと思います。
損益通算は、所得税の課税所得金額に影響する重要な制度となっておりますが、近年は複雑化しています。還付を受け損ねたり、逆に修正申告をしたりしなければいけなくなるなどの事態が生じますので、是非ご確認ください。
1 損益通算とは
所得税法69①では、「不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、」一定の順序により、「これを他の各種所得の金額から控除する。」と規定されています。
なお、生活に通常必要でない資産に係る所得の金額の計算上生じた損失がある場合には、その損失の金額は原則として、控除することはできません。(所69②)
2 内 容
(1) 原則として損益通算できる損失
① 不動産所得の損失
② 事業所得の損失
③ 山林所得の損失
④ 総合課税による譲渡所得の損失(生活に通常必要でない資産の損失は控除できません)
(2) (1)の中で損益通算できないもの
上記(1)に掲げる所得の計算上生じた損失の金額は、原則として損益通算ができることとされていますが、一部除外されているものがあります。
① 土地取得に係る負債利子
不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額がある場合、その損失額のうち「土地を取得するために要した負債の利子」に相当する金額は損益通算の対象とはなりません。特に、土地建物一括購入や、借換えを繰返している場合などは土地の取得部分に係る利子のみを抜き出す必要がありますので、全額通算してしまったり又はしなかったりすることがないように注意しましょう。
② 国外中古建物の減価償却費
令和3年改正により、国外中古建物に係る減価償却費の損金算入制限が設けられています。償却費計上により生じた不動産所得の損失のうち、償却費相当額はなかったものとされ、損益通算はできません。
国外中古建物を複数持っている場合には、計算が複雑になります。計算方法のご確認をお願いします。
③ ゴルフ会員権等の譲渡損失
平成26年4月以降ゴルフ会員権やリゾート会員権の譲渡損失については、損益通算ができなくなっています。
④ 注意が必要な事業所得の損失
所得税法基本通達35-2には、
「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。」
とありますので、このような場合には、事業所得とはならず、損益通算が認められないこととなりますので、ご注意ください。
(3) (1)以外で損益通算できるもの
① 上場株式等の譲渡損失の損益通算の特例(措法37の12の2)
配当所得を申告分離課税とした場合には上場株式等に係る譲渡損失との損益通算が可能です。
ただし、令和6年以降所得税と住民税の申告制度が統一されていますので、あえて損益通算しない、つまり申告しないという選択も考えられます。
② 居住用財産の買換え等の場合に譲渡損失が生じたとき(措法41の5)
譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えている居住用財産(マイホーム)を譲渡して損失が出た場合には、損益通算が出来ます。
譲渡資産の要件
所有期間5年超で譲渡した者の居住の用に供しているもので、親族等以外に譲渡した場合。この特例は、買換えた場合の特例ですので買換資産がなくてはなりません。
買換資産の要件
イ 取得期間
居住用財産を譲渡した年の前年1月1日から譲渡した年の翌年12月31日までに買換資産を取得すること
ロ 居住開始期間
買換資産を取得した日の翌年12月31日までに自己の居住用に供したとき又は供する見込みであるとき
ハ 床面積
居住用部分の床面積が50㎡以上であること
ニ 住宅借入金等
買換資産を取得した年の年末において、その買換資産について契約時において償還期間が10年以上である住宅借入金等があること
ホ 資産の所在地
国内にあるものに限ります
③ 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例(措法41の5の2)
譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えている居住用財産の譲渡をした場合において譲渡して損失が出た場合には損益通算が出来ます。
この特例は譲渡資産については②と同様ですが、②と違い買換資産の取得は必要ありません。ただし、損益通算できる損失は、「その譲渡に係る契約を締結した日の前日における譲渡資産に係る住宅借入金等の金額の合計額からその譲渡の対価の額を控除した残額を限度」(「住宅借入金等の残高」-「譲渡資産の対価の額」)となっておりますので、譲渡契約締結日の前日において一定の住宅借入金等の残高があることが条件となります。
④ 重複適用の禁止
②③については前年又は前々年において、居住用財産に係る一定の特例の適用を受けている場合においては、適用することができません。
3 繰越控除
損益通算をしてもなお損失が残る場合には、原則として、損失が生じた年の翌年以後3年間は繰越控除の適用を受けることができます。
青色申告の特例の適用を受けていなければならないなどの要件はご確認ください。
執筆:大橋 充佳 税理士/監修:長野 匡司 税理士
