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株式会社等のみなし解散がなされた場合の取扱い

2023/04/10

1.みなし解散とは

⑴ 概要
 休眠会社(休眠一般社団法人・一般財団法人も同様)を放置すると、①実体を失った会社等がいつまでも登記上公示されたままとなり、登記の信頼を失いかねないこと、②休眠会社等を売買するなどして、犯罪の手段とされかねないこと等の問題があります。

 そこで法務省では、毎年休眠会社等の整理事業を実施しています。

 令和4年は10月13日に12年以上登記がされていない株式会社及び5年以上登記がされていない一般社団法人又は一般財団法人(以下「一般社団法人等」という。)に対して、法務大臣が官報公告を行うとともに、管轄登記所から該当の会社に対し、「通知書」(法務大臣が、これらの休眠株式会社・休眠法人に対し、2か月以内に法務省令で定めるところによりその主たる事務所の所在地を管轄する登記所に事業を廃止していない旨の届出をすべき旨を官報に公告した場合には、登記所は、その旨の「通知」をしなければなりません。)が発送されました。(会社法472条、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」という。)149条、203条参照。

 なお、有限会社、合同会社等の持分会社、医療法人等のその他の法人にはこの規定の適用はありません。

 上記の対象となった会社等は、その2か月後の12月13日までに、「必要な登記申請」又は「まだ事業を廃止していない旨の届け出」をする必要があり、これらの手続きがなされなかった場合に、管轄の登記所において12月14日付で職権により「みなし解散の登記」がなされました。
 
 実務上は、みなし解散の登記をされないためには、「まだ事業を廃止していない旨の届け出」をするとともに、2か月以内に「役員変更登記」 等を行う必要があります。


⑵ みなし解散の判定時期と役員の任期との関係
 ① 株式会社については、その発行済株式のすべてに譲渡制限が付いているいわゆる非公開会社の場合には、取締役、監査役の任期を10年まで伸長することができることになっているため、その10年から2年猶予をみて、みなし解散の判定期間を12年としています。
 ②一般社団法人等については、理事の任期が2年、監事の任期が原則4年(2年まで短縮可)となっているので、その4年から1年猶予をみて、みなし解散の判定期間を5年としています。

2.みなし解散がされた場合の登記手続

    一般社団法人等の登記手続は、株式会社の手続に準じているので、株式会社について概説します。

⑴ そのまま清算する場合
  清算人の登記(会社法478条、928条)を経て清算結了の登記(会社法929条)により、株式会社はすべての事業を終了し消滅します。
  なお、清算株式会社は2か月以上の期間を定めて債権者に対して官報で公告し、知れている債権者には格別に催告しなければならないとされているため(会社法499条)、清算結了の登記までには、2か月以上の期間を必要とします。

⑵  事業を継続する場合
 株式会社は上記1.のみなし解散の登記があった日から3年以内であれば、株主総会の決議により、継続することができます。(会社法473条)
    3年が経過すると清算結了する他に途がないことになります。

① 役員変更登記
  みなし解散により、取締役は全員退任します。(会社法477条7項)
  従って、株式会社の継続の登記を行う(会社法927条)とともに、改めて取締役及び代表取締役の就任登記が必要になります。
  但し、みなし解散の場合でも監査役は任務を継続します。監査役に変更がない場合は、改めて監査役の登記をしていただく必要はありません。

② その他の登記
  株式会社の継続登記を行う場合に、取締役会の設置(又は非設置)、監査役の設置(又は非設置)、本店移転、商号変更、目的変更等の事由がある場合には、併せて申請していただく必要があります。

3.みなし解散があった場合の事業年度の特例

⑴ そのまま清算する場合
 株式会社及び一般社団法人等は、解散の日に事業年度が終了します。(会社法14条1項1号)

 その後は、清算事務年度の規定が適用され、残余財産が確定するまでは、解散の日から毎年1年ごとの応答日に各事業年度が終了します。 (会社法494条1項、一般法人法227条1項)(この規定は有限会社にも適用されます。)
  (法人税法基本通達1-2-9参照)

 合同会社等の持分会社及びその他の法人には清算事務年度の規定がなく、解散後も定款等で定められた事業年度の末日までを一事業年度として申告が必要となります。
 
 具体的には、3月決算の法人が令和4年12月14日に解散となった場合で、残余財産が確定しなかった場合 

① 株式会社、有限会社、一般社団法人等
「令和4年4月1日~12月14日」、「令和4年12月15日~令和5年12月14日」がそれぞれ事業年度となります。

② 上記①以外の法人
「令和4年4月1日~12月14日」、「令和4年12月15日~令和5年3月31日」がそれぞれ事業年度となります。

⑵ 事業を継続する場合
   株式会社及び一般社団法人等は、解散の日に事業年度が終了します。(法人税法14条1項1号)
 その後会社が継続の登記をした場合は、その継続の日の前日に事業年度が終了します。(法人税法14条1項6号)

※具体例
 3月決算の株式会社が令和4年12月14日にみなし解散となり、その後2月1日に継続の登記をした場合(定款を変更しないで、3月決算法人を継続したものとする。)
 「令和4年4月1日~12月14日」、「令和4年12月15日~令和5年1月31日」、「令和5年2月1日~令和5年3月31日」の3つの事業年度となります。
 このように、4か月以内の短期間に3回法人税の申告が必要なケースがあり、事務負担も莫大なものとなるため注意が必要です。

4.顧問税理士として必要な対策

⑴ 役員の任期管理
  顧問先の株式会社及び一般社団法人等については、定款及び登記事項証明書により、取締役及び監査役(一般社団法人等については、理事及び監事)の任期を管理して、重任の役員変更登記を行っておく必要があります。

⑵ 登記に関するその他の管理
 ① 本店を移したあと、本店移転登記をしていないと登記所からの通知書を受け取ることができないので、その後顧問先の株式会社等がみなし解散となった場合でも、すぐに気が付かないケースがあります。
 ② また、本店所在地を事業所ではなく自宅にしているケースもあります。その場合は、自宅が移転した時に必ず本店移転登記をしておく必要があります。

執筆:梶田 義孝 税理士/監修:北出容一 税理士

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