日本居住者の金融口座情報 250万件を94カ国・地域から受領
2023/02/14
国税庁はこのほど、令和3事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要を公表した。
租税条約等に基づく情報交換には、「自動的情報交換」、「自発的情報交換」「要請に基づく情報交換」の3つの類型があり、今回で4回目となる金融口座情報(CRS情報)の「自動的情報交換」では、日本の居住者に係る金融口座情報250万664件(前事務年度190万6896件)、口座残高約14兆円(同12兆6000億円)を94カ国・地域の外国税務当局から受領した一方、日本の非居住者に係る金融口座情報65万1794件(同65万558件)、口座残高約4兆9000億円(同6兆8000億円)を国税庁から77カ国・地域に提供した。
【CRS 情報の自動的情報交換の活用例】
滞納者Aは、日本に居住しているX国籍の者であり、勤務先の日本法人からの給与収入や報酬等について確定申告を行ったが、その国税を納付しなかった。滞納者Aの国内の財産では徴収が不足していたところ、X国から受領したCRS情報から、国内調査では把握していなかった滞納者A名義のX国国内の預金口座を把握した。そこで、国税庁は租税条約に基づき、X国の税務当局に対して徴収共助の要請を行った。その結果、上記預金についてX国税務当局により差押えおよび取立てがなされ、徴収することができた。
CbCR(Country by Country Report:国別報告書)の自動的情報交換では、外国に最終親会社などがある2246グループのCbCRを53カ国・地域の外国税務当局から受領し、901グループのCbCRを国税庁から60カ国・地域に提供した。
法定調書により把握した非居住者等への支払についての情報約10万件を外国税務当局から受領した一方、約77万件を外国税務当局に提供した。
次に、「自発的情報交換」は、国際協力の観点から、自国の納税者に対する調査などの際に入手した情報で、外国税務当局にとって有益と認められる情報を自発的に提供するもの。外国税務当局から国税庁に提供された「自発的情報交換」の件数は448件。前事務年度は2万351件だったが、これは特定の国から大量の情報を受領したためで、令和3事務年度は大幅に減少した。
国税庁から外国税務当局に提供した「自発的情報交換」の件数は73件(同106件)だった。地域別にみると、アジア・大洋州の国・地域への提供が40件と最も多くなっている。
最後に、国税庁から外国税務当局に行った「要請に基づく情報交換」の件数は639件(同638件)。地域別にみると、日本と経済的関係が強いアジア・大洋州の国・地域向けの要請が520件となり、約8割を占めている。外国税務当局から国税庁に寄せられた「要請に基づく情報交換」の件数は128件(同251件)で、平成29事務年度から前事務年度までの増加傾向から転じて減少した。
【要請に基づく情報交換の活用例】
内国法人Bは、日本国内で仕入れた宝石類をY国に輸出し、Y国に所在する取引先の法人へ販売することで、輸出売上を計上し、仕入に係る多額の消費税の還付申告を行っていた。内国法人Bの調査において、取引資料に不審点があったため、Y国税務当局に、取引先の法人の経理処理等が分かる資料の提供を要請した。その結果、当該取引は実在しないことが判明し、内国法人Bが架空仕入および架空売上を計上し、不正に消費税の還付申告を行っていた事実を把握した。