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インタビューInterview

ステージ4のがんを乗り越え、経営者に伝え続ける『がん対策』の大切さ

2022/03/04

加瀬 明彦 税理士(東京・八王子市)

 
 本紙第33号(2019年夏号)において、2017年9月にステージ4のがんを告知された加瀬明彦税理士のインタビュー記事を取り上げた。あれから2年半、加瀬税理士は現在も経過観察を行いながら経営者や税理士に向けてがん対策の大切さを訴え続けている。



――前回のインタビューから2年半経ちましたが、お身体の具合はいかがですか。

 現在は経過観察として3カ月おきにCT検査などを行っています。それ以外は普通の日常生活に戻りましたが、がんというのは完治することはありません。寛解(かんかい)といってがんの腫瘍が小さいままジッとしている状態が続いているだけで、それが一時的なのか永続的なのかも分かりません。ですから、どこかで動き出したときに素早くキャッチできるよう、定期検査だけでなく、何か怪しいと感じたらすぐに受診するように心がけています。

――最初にがんを告知された時の状態を考えると、ここまでの回復はすごいと思います。
 確かに、2017年9月に腎盂癌を告知された時は、すでにステージ4でリンパ節への転移が広がっていて、抗がん剤治療が奏功すれば五分五分の確率で手術まで持ち込めるという厳しい状況でした。告知後すぐに職員と会議を開き、病状の共有と仕事の引継ぎ方法を策定しましたが、その時点では手術ができるかどうかも分からなかったので、1~2年以内の死亡を前提に今後の予定を立てましたね。

――税理士業務も以前と同じように行っていますか。
 特に支障はありませんが、がんの告知を受けて仕事を職員に分散して以来、できることは職員に任せて、大事なところで私が出ていくようにしています。とはいえ、新型コロナの影響で、お客様を訪問する機会もかなり減りましたが、ZOOMなどを上手く活用してコミュニケーションを取っています。

――この2年半で、がんについて相談されることも増えましたか。
 関与先には「がんになったら何でも聞いてください」と日頃から言っていますので、社長本人やご家族から相談を受けることは結構ありますね。その際、私はまず「どこの病院に行っていますか?」とお聞きします。すると、大半は地元の病院に通っていますので、「がん専門病院に行ったほうがいいですよ」とお伝えします。地元にも大きな病院はありますが、がん専門病院の患者は全員がん患者です。がんを扱っている件数は一般の病院よりも圧倒的に多く、がん治療の知識や経験が豊富なスタッフも揃っています。セカンドオピニオンとしての利用でもいいので、とにかく一度受診することを勧めています。

――がん治療のプロに診てもらうと安心しますね。
 まさにそのとおりで、がん患者が精神的に一番つらいのは、「今の病院で本当に大丈夫なのか」、「もっとほかに良い病院があるんじゃないか」といった不安を抱えながら治療を続けることです。先日がんで亡くなった知り合いは、がん専門病院に転院した後、もう無理だということで地元の病院に戻ってきましたが、がん専門病院の先生に診てもらったことで、地元に戻った後も最後まで納得して治療を受けていました。特に、私どものお客様である中小企業の経営者は、自分の考えや判断で会社を長年経営されていますので、もう仕方ないとご自身で納得すれば、その後の気持ちや行動も変わってくるはずです。

――がんに罹患されていない方には、どんなアドバイスをしていますか。
 検診や人間ドック、がんドックなどをできるだけ受診するように勧めています。多くの経営者が売上アップや資金繰りのために奔走していますが、組織のトップとして、やはり健康状態にも責任を持たなければいけません。がんの罹患率は60歳代から飛躍的に上昇することが分かっています。中小企業経営者の年齢のピークは66歳ですから、他人事ではありません。会社で働く従業員のため、また、ご自身の家族のためにも、60歳代の定期的な人間ドックやがん検診は絶対に受診すべきです。これは60歳以上が54%を占めている税理士業界にも同じことがいえます。そもそも、がん検診は乳がん・肺がん・大腸がんで40歳以上、胃がんでは50歳以上に推奨されていますが、受診率は5割前後と低く留まっており大きな問題となっています。

――ただ、新型コロナの影響でがん検診を受ける人が減少していると聞きます。
 病院に行くことを躊躇する方もいらっしゃると思いますが、コロナ禍だからといってがんが様子を見てくれるわけではありません。この2年間のうちに検診していれば早期にがんを発見できた人は大勢いるはずです。今後、がんが見つかったときにはステージが進行していたり、手遅れというケースが急増することを懸念しています。実際、私の周りにも最近がんが見つかり、すでに手遅れだったという方がいらっしゃいます。

<がん保険は入っておくべき 保障内容の見直しも重要>

――そのほかに、がんに関してアドバイスしていることがあれば教えてください。
 今はがんになっても簡単に死なない時代です。ただ、治療を続けながら生きていくにはお金がかかります。そうした金銭面の負担をカバーしてくれるがん保険などの備えはとても大切です。私自身も保険に助けられましたが、お金のことを気にせずにしっかりと治療を受けるためにも、がん保険に「入っておいたほうがいい」ではなく「入っておくべき」です。また、お客様には今加入しているがん保険の保障内容を必ず見直すように伝えています。

――なぜ、保険を見直す必要があるのでしょうか。
 最近のがんは薬物療法が充実して通院治療が多くなっていますが、昔のがん保険は診断一時金と手術・入院治療に重点を置き、通院治療は手薄なものもあります。時代によってがんの治療も変わってきますので、自分が求めている保障がしっかりカバーされているか、定期的に見直す必要があるわけです。それと、私自身がとても後悔しているのが、がん保険の先進医療特約に入っていなかったことです。先進医療の中でも重粒子線治療は1回につき300万円前後と高額なので、自腹だと簡単には手が出せません。先進医療を受ける可能性は少ないですが、必要になった時には絶対に役立つので、先進医療特約は入っておくべきだと勧めています。

――加瀬先生はがんをテーマにした講演活動もされていますね。
 新型コロナの影響でストップしているものもありますが、一昨年は国立がん研究センター・がん対策情報センターの患者・市民パネルのメンバーとして、富山県で開催された一般社団法人アジアがんフォーラムの「ワールドキャンサーデー」のイベントに参加し、地元のロータリークラブの会員を対象に「経営者が知っておきたいがんと経営の話」をテーマに講演してきました。今後は講演会だけでなく、がんと経営に関する本の出版なども考えています。

――全国の税理士先生にメッセージをいただけますか。
 もし、関与先の経営者からがんになったと連絡を受けたら、「そうですか。それは大変ですね。頑張ってください」といった会話で終わりにしないで、もう少しフォローしてあげてほしいですね。乳がんなどは患者を支援する団体などがありますが、高齢者のがん患者を親身になってサポートしてくれる団体はありません。しかも、経営者の場合は、がんの悩みとともに仕事の問題もついてきますので、それらをまとめてサポートできるのは、まさに税理士ではないでしょうか。

――そのためには、がんに関する知識が求められてきますね。
 医者ではありませんので、治療に関する具体的な知識は必要ありませんが、がんに関する様々な情報を入手して、それをがん患者に提供することで、選択肢を広げてあげることがベストだと思います。特に、がんの告知から2週間は精神状態が不安定になりやすく、がんに罹患したショックから廃業してしまったり、家族や友人との関係を断ってしまう方もいます。また、インターネットなどから科学的・医学的にコンセンサスが得られていない根拠に乏しい情報を鵜呑みにしてしまう方も少なくありません。そんな不安に押しつぶされそうな時に、顧問税理士が近くで支えてくれたら非常に心強いと思います。

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