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インタビューInterview

東大卒プロボクサーの会計人が起業家のチャレンジを全力で応援

2016/09/09

柏野 晃平   公認会計士・税理士

「東大卒のプロボクサー」で、27歳の若さで独立した柏野晃平公認会計士・税理士。事務所名「アクセル」には、「起業家の事業成長を加速させ、人生を悔いなく生きるお手伝いをしたい」という熱い思いが込められており、地元の川崎市を中心に多くの起業家のハートをつかんでいる。

――ボクシングを始めたのはいつ頃ですか。
 
中学、高校と剣道部に所属していましたが、当時からボクシングに興味を抱き、大学に進学したらボクシング部に入部しようと考えていました。その後、東京大学に入学してボクシングを本格的に始め、全日本アマチュアボクシング選手権のライトフライ級で6位にランクインし、東京都代表として国体にも出場しました。

――大学から始めて、すごい成績ですね。
 アマチュアで結果を残すことが目標だったので、自分でも満足していますが、部活に熱を入れすぎて学業が疎かになった時期がありました。親にも申し訳なく、その反省からボクシングはここで終わりにしようと思い、新たな目標として掲げたのが、公認会計士試験の挑戦です。在学中に2次試験に合格し、大学卒業後はあずさ監査法人に就職しました。

――当時から独立開業を意識されていたのでしょうか。
 
多少意識はしていましたが、社会人経験がゼロだったので、まずは監査法人で資格要件の2年間は働いてみて、その時に仕事が面白ければ続けるし、そうでなければ違う道を探そうと思っていました。そして2年が経つ頃、監査法人以外の道を考えるようになり、同時に、ボクシングへの思いも再燃してきました。そんな時、スポーツ好きのある税理士から「もう一回ボクシングやってみなよ」と背中を押され、その方の税理士法人に転職してトレーニングを再開しました。

――ボクシングと税理士業務の両立はハードですね。
 
とても大変でしたが、非常に充実した時間を過ごせましたね。仕事面では税務のキャリアを積みながら、税理士という職業のやりがいを学び、ボクシングでもプロのライセンスを取得し、デビュー戦を勝利で飾ることもできました。勤務先の税理士法人には大変お世話になりましたが、小さな船でも自分で舵を取りたいと思い、1年後に独立の道を選択しました。

――不安はありませんでしたか。
 
顧客ゼロ、収入ゼロですから不安はありました。ただ、自分がどこまでできるか試してみたいという自己実現の欲求があり、とにかくチャレンジしてみることにしました。開業当初は、交流会などに参加しながらコネクションを増やし、自分と価値観が同じ人、気が合う人と出会っていく中で、見込客の紹介や顧問契約の依頼が少しずつ増えていきました。

―関与先はどんな業種が多いですか。
 飲食業が全体の3分の1を占めています。特に業種特化しているわけではありませんが、ひとつの業種に絞り込むことで、その業界の習熟スピードを上げることができます。私の場合、飲食店専門の内装業者や飲食店経営を支援する組織などと提携していくうちに、飲食業をサポートする武器が増えていったので、まずはこれを自分の得意分野にしようと考えたわけです。実際、飲食業にまつわる相談であれば、様々な解決策を揃えていますので、お客様に満足してもらえる提案ができると自負しています。

――飲食店は開業しやすい反面、すぐに閉店してしまうところもあります。
 
確かに、多くの飲食店が開業から2年ほどで閉店してしまいます。その最たる理由は資金ショートによるものです。飲食業に強い税理士が毎月数字をチェックしていれば、お店の異常を察知して適切な手を打つことができたはずです。飲食業に限らず、起業家の方々は様々な夢や想いを胸に独立されています。そうした起業家の事業成長を加速させ、人生を悔いなく生きるお手伝いをしたい――、事務所名「アクセル」にはそんな思いが込められています。

――飲食店の開業予定者に向けた専用サイトを立ち上げていますね。
 
飲食店の開業予定者の心を掴むためには、事務所のホームページとは別に、「飲食開業に強い税理士」をアピールするサイトが必要だと思って立ち上げました。私は認定支援機関として認定を受けていますので、その専用サイトでは、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」を利用する際に融資枠の拡大や利率の低減が可能になる点、本審査前に日本政策金融公庫の担当者と事前協議ができる点、審査もスムーズで期間が短縮できる点などを強調しています。

――融資の面談にも同行しているのでしょうか。
 
開業予定者の大半は融資の初心者です。面談で話の意図が伝わらなかったり、緊張して上手く話せない人もいますので、私も同行してサポートしています。同行のメリットとしては、開業予定者に安心を与えるだけでなく、面談中に審査の通過が難しいと判断した場合、私のほうで取り下げることもできます。これにより、審査に落ちたという履歴は残らず、もう一度仕切り直してリベンジすることも可能となります。

――関与先の飲食店に客として訪問することもありますか。
 
プライベートでよく行きますよ。これも飲食業に限りませんが、関与先から顧問契約を解消されるのは、リレーションが低いことが大きな要因だと思います。ですから、私の事務所ではサービスはもちろん、互いの関係性でも満足してもらえるように、関与先とのリレーションの維持を日頃から心掛けています。

――今後の事務所経営における目標を教えてください。
 
開業当時から変わりませんが、これからも自分と同じ価値観の人とたくさん出会い、仕事を通じて全員がハッピーになることを目指していきます。これは、関与先や提携先はもちろん、事務所の職員も含まれます。職員を困らせてばかりいる関与先がいれば、高い顧問料であっても契約を解消するし、職員には充実した人生を送ってほしいので、1千万円以上の報酬を払える仕組みを整えていきたいと考えています。

――年収1千万円の給料はすごいですね。
 
私の事務所ではクラウド会計をフル活用していますので、入力作業はほとんどありません。その時間をお客様の訪問に費やし、付加価値サービスを提供することがメイン業務です。通常、事務所職員は一人で20~30件ほど関与先を担当しますが、私の事務所では効率化を図ることで一人100件の担当を目標としています。現状、その数字には達していませんが、新規顧客も良いペースで増えていますので、数年後には実現させたいですね。将来的には完全歩合制で、勤務時間なども自由で構わないと考えています。

――今後、会計事務所の働き方も変わってくるのでしょうか。
 
例えば、先ほどの認定支援機関についても、認定を受けない人もいれば、認定を受けたけど仕事にならないという方もいるようです。しかし、私の事務所では大きな武器になっています。クラウド会計にしても、積極的に導入している事務所もあれば、そうでないところもある。新たなものを採り入れた場合、当然、働き方は変わってくるし、それによってビジネスチャンスが生まれる可能性も高まります。もちろん、事務所の経営スタイルに正解はありませんが、ITはさらに進化し、お客様のニーズも確実に変わってきますので、今後、税理士業界における勢力図も少しずつ変わってくるかもしれませんね。

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