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教えて熊王先生 消費税の落とし穴はココだ!税理士 熊王征秀

特定期間における課税売上高 簡易課税制度の適用判定は?

2016/07/22

Q.  当社は平成27年3月20日に資本金300万円で設立した12月決算法人です。来期(平成28年1月1日~平成28年12月31日)における納税義務は、特定期間における課税売上高で判定することになると思われますが、特定期間については、消費税法9条の2の4項2号で「前事業年度開始の日以後6か月の期間」と定義されています。そうすると、当社の設立日は平成27年3月20日ですので、来期の特定期間は平成27年3月20日から平成27年9月19日までということになります。来期の納税義務の判定につき、特定期間における課税売上高を計算するためには、今年の9 月1 9日で仮締めをして、特定期間中の課税売上高を集計することになるのでしょうか。また、特定期間における課税売上高を年換算した金額で、来期の納税義務判定と簡易課税制度の適用判定をすることになるのでしょうか。

A.
○ 特定期間における課税売上高による納税義務の判定(平成23年度改正)
 平成23年度改正により、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の場合でも、直前期の上半期(特定期間)における課税売上高が1,000万円を超える場合には、納税義務を免除しないこととなりました。特定期間については、前事業年度開始の日以後6か月の期間と定義されていますが、月末決算法人で、6か月の期間の末日が月末でない場合には、その6か月の期間の末日の属する月の前月末日までの期間を「6か月の期間」とみなし、納税義務を判定することになります(消法9の2④二、消令20の6①一)。

 したがって、御社の場合には、平成27年3月20日から平成27年8月31日までの期間が特定期間となります。また、特定期間中の課税売上高は年換算する必要はありません。

 なお、直前期の月数が7か月以下の場合には、原則として平成23年度改正法は適用除外とされていますので、御社が決算期を9月に変更した場合には、設立事業年度(平成27年3月20日~平成27年9月30日)は7か月以下となり、その翌事業年度(平成27年10月1日~平成28年9月30日)の納税義務は免除されることになります。

○ 給与等の支払額による判定
 特定期間における課税売上高は、売掛金を計上したところのいわゆる発生ベースで認識することになります。そこで、期中現金主義で記帳しているような小規模事業者に配慮して、特定期間中の課税売上高に代えて、給与等の支払額で納税義務を判定することも認めることとしています。この取扱いは、特定期間中の課税売上高の計算が困難な事業者に限定されているわけではありませんので、結果として、特定期間中の課税売上高と給与等の支払額のいずれかが1,000万円以下の場合、納税義務は免除されることになります。

 なお、給与等の支払額には当然に役員報酬も含まれますが、所得税が非課税となる通勤手当や未払給与などは含める必要はありません( 消基通1 - 5 -23)。

○ 簡易課税制度の適用判定
 特定期間における課税売上高は納税義務判定にのみ用いるものであり、簡易課税制度の適用判定には関係ありません。したがって、御社の来期における基準期間は存在しませんので、基準期間における課税売上高は5,000万円以下(ゼロ)ということになります。

 よって、特定期間における課税売上高が5,000万円を超えている場合であっても、設立事業年度中に「簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、来期は簡易課税制度の適用を受けることができます。

<プロフィール>
熊王 征秀 税理士
昭和59年学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。平成4年同校を退職し、会計事務所勤務。平成6年税理士登録。平成9年独立開業。東京税理士会会員相談室委員、東京税理士会調査研究部委員、日本税務会計学会委員、大原大学院大学准教授ほか。消費税関連の書籍も多数執筆。

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