社会福祉法人の横領事件から派生する問題
2019/01/21
社会福祉法人の横領事件が後を絶ちません。平成31年1月9日に横領で逮捕されたのは、大阪府で保育所を運営する社会福祉法人「くれない学園」の56歳の元副園長です。元副園長は会計責任者として学園の資金や口座を管理していましたが、横領した金額が2億7千万円というのですから、よくもそんなお金が保育所にあったものです。しかも、保育所は今もびくともしていないのですから、よほど儲かっていたのでしょう。横領したお金は、元副園長が独立して社会福祉法人を立ち上げる目的だったようで、商品先物取引につぎ込まれていました。
横浜市で6か所の保育所を運営する社会福祉法人「ももの会」でも、平成30年3月に、68歳の前理事長が5,860万円横領していたことが発覚して、大きな騒ぎになりました。
社会福祉法人で横領があると、それに派生して、横領した金額が給与所得と認定され、源泉所得税が追徴されるという問題があります。平成15年の大阪高裁判決では、社会福祉法人に対して実質的に全面的な支配権を有していると認定された前理事長の横領が給与所得と認定され、源泉所得税の納税告知処分と重加算税の賦課決定処分が認められました。
ところで、社会福祉法人の横領事件に関して、そこに関与していた税理士に影響が及ぶことはないのでしょうか。平成25年に大阪府の阪南市社会福祉協議会の事務局長代理が7,000万円横領したとして逮捕された事件では、会計に関する業務委託を受けていた税理士の責任を問う声が上がり、平成29年3月31日、大阪地方裁判所で判断が示されました。その結果は、税理士は経理業務について会計指導をする業務は受任しておらず不法行為に当たるとはいえない、受任業務に伴う付随義務に違反したとはいえないというものでした。また、税理士と横領の因果関係はないとの判断も示されました。
しかし、この横領事件については、当時の社会福祉協議会を運営していた17人の理事が職務責任に答える形で損害回復金を自己負担しています。