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第13回:不良債権の償却による非上場株式の株価の引下げ対策

2022/02/02

 第11回(相続税の軽減のための非上場株式の株価引下げ対策)では、非上場株式の株価引下げ対策の手法として、類似業種比準価額の引下げ対策があることを説明しました。今回はこの類似業種比準価額の引下げ対策のうち、不良債権の償却による方法について説明します。

1.不良債権の償却による株価引下げ対策の概要

 類似業種比準方式では、【評価会社の営む事業と類似する業種の上場企業の課税時期の株価】×【その上場企業の1株当たりの配当金額、年利益金額および簿価純資産価額に、評価対象会社の1株当たりの配当金額、年利益金額および簿価純資産価額を比準させて求めた倍率】×0.7(中会社で評価する場合は0.6、小会社で評価する場合は0.5)の算式により非上場株式を評価します。

 倍率の計算要素は配当、利益、純資産の3つであり、法人税法上認められる不良債権の償却(貸倒損失処理)をすることで、法人税の課税所得金額(=利益金額)および純資産価額の2つを引下げる効果が得られ、結果として株価を引下げることができます。

 例えば、A社(非上場会社)の100%子会社B社が経営不振により時価純資産が債務超過状態であり、A社にはB社に対する貸付金債権があるとします。この場合において、A社が100%子会社であるB社を清算し、B社に対する貸付金の償却(貸倒損失処理)を行うと、A社の利益金額および純資産価額を圧縮することができ、A社株式の株価の引下げを行うことができます。

2.不良債権について税務上の貸倒れが認められる場合

 1のA社の事例で示したように貸付先が清算する場合は、貸倒の事実は明快ですが、貸付先が存続している場合は、法人の有する金銭債権について貸倒れが生じ、会計上、貸倒損失として処理しても、法人税法上もその金銭債権が貸倒れと認められて損金性が認められるとは限りません。会計上の貸倒損失処理がそのまま法人税法上の損金の額に算入されるかどうか十分な検討が必要です。

 不良債権について税務上の貸倒れが認められる場合は、次のとおりです。

(1)法律上の貸倒れ
 債権の全部または一部が更生計画認可の決定や再生計画認可の決定があった場合など、法的手続きにより切り捨てられた場合等には、その切り捨てられた金額は、その事実があった日の属する事業年度に貸倒れとして損金の額に算入します(法人税基本通達9−6−1)。
(2)事実上の貸倒れ
 金銭債権(担保物があるときはその処分後)につき、債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収不能となった場合には、税務上はその回収できないことが明らかとなった日の属する事業年度に貸倒れとして損金の額に算入することができます(法人税基本通達9−6−2)。ただし、回収不能の判断についての具体的な基準が定められていないため、その判断には難しいものがあります。
 (3)形式上の貸倒れ
 債務者に対する売掛金、受取手形などの売掛債権で、取引停止した時、最後の弁済期または最後の弁済の時のうち最も遅い時から1年以上経過している場合(担保物がある場合を除きます。)、または同一地域の債務者に対する売掛債権の合計額よりも取立費用がそれ以上かかり、支払を督促したにもかかわらず弁済がない場合には、その事実が発生した日の属する事業年度に、売掛債権から備忘価額を控除した残額を貸倒として損金の額に算入することができます(法人税基本通達9−6−3)。

3.不良棚卸資産等の処理

 不良棚卸資産の除却ならびに含み損のある有価証券、ゴルフ会員権および不動産の売却により実現した損失は、損金の額に算入されますから、課税所得金額および純資産価額を圧縮することができ、不良債権の償却時と同様の株価引下げの効果が得られます。

【今回のポイント】
 非上場会社が保有する不良債権を償却することにより、法人税の課税所得金額(類似業種比準方式における評価会社の利益金額)および純資産価額を引下げる効果が得られ、結果として非上場会社の株価を引下げることができます。

(税理士法人タクトコンサルティング 税理士 山崎 信義)

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