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中小企業でも直面する非居住者との取引

2026/09/25

1 はじめに

 中小企業であっても、非居住者である個人への支払が生じるケースは決して珍しくありません。本稿では、日常の実務で遭遇しやすい代表的な事例として、フリーランスである非居住者との取引、および会社役員である非居住者との取引の2つを取り上げ、その実務上の取り扱いについて解説します。

2 基本的な考え方

 非居住者との取引は、いわゆる「国際税務」の範疇となります。難解なイメージを持たれがちですが、基本的な検討順序は以下の通りです。

 (1)まずは、国内法における課税関係について検討します。

 (2)次に、相手国との租税条約の内容を検討します。

 (3)同じ項目について、国内法と租税条約で異なる定めがある場合は、租税条約が優先します。これは日本国憲法第98条第2項において、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と規定されているためです。

 (4)したがって、国内法において課税対象(源泉徴収が必要)とされている場合であっても、租税条約において免税、ないし軽減税率の適用となるケースがあります。ただし、この適用を受けるためには、支払の前日までに税務署へ「租税条約に関する届出書」を提出することが要件とされています(租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令第2条等)。

 なお、このあたりの国際税務の基本的な考え方については、三木義一氏の著書『よくわかる国際税務入門〔第3版〕』(有斐閣、2012年)で非常にわかりやすく説明されていますので、実務の参考になります。ただし、本書籍は平成26年度改正の帰属主義への転換前のものですので、その点は注意してください。

3 フリーランスへの支払

(1)非居住者であるかどうかの検討

 取引の相手方である個人が非居住者であるかどうかを、まず確認しなければいけません。本稿では、相手が明確に非居住者であることを前提に検討を進めますが、実務上、支払者側からはその個人が本当に非居住者であるかどうかがわかりにくいケースも想定されます。

(2)国内源泉所得の分類と源泉徴収義務

 非居住者に対する支払については、国内源泉所得が課税対象となります(所法7条1項3号)。国内源泉所得は17種類に分類されており(同法161条1項各号)、支払者は、同項4号から16号までの支払について源泉徴収義務を負います(同法212条1項)。

 源泉徴収の税率は原則として20%です(同法213条1項1号、復興特別所得税を含めると20.42%)。ただし、所得の分類によって一部税率の異なるものがあります(同法2項3項)。また、年金や賞金については、課税標準の計算上、控除額が規定されています(同項1号イ・ロ・ハ)。

(3)代表的な国内源泉所得の解説

 国内源泉所得の17種類のうち、実務で直面しやすい代表的なものについて解説します。

①人的役務の提供事業の対価(6号)
 国内における自己の役務提供が主たる内容である場合は、第6号ではなく後述の「給与、報酬、年金」に該当します(所基通161-21)。

②使用料等(11号)
 条文上「国内において業務を行う者」から受ける使用料と規定されているため、支払者の業務がどこで行われるのかが判断ポイントとなります。たとえば、デザイナーやエンジニア等との契約においては、著作権がどちらに帰属するのか、報酬の法的な性質が何であるか等の入念な確認が必要となります。

③給与、報酬、年金(12号)
 上記のとおり、国内においてフリーランス個人自身が提供する役務の対価は、原則としてこちらに該当して課税対象となります。

4 非居住者である役員との取引

 本項では、非居住者に対する「役員報酬」の取り扱いについて解説します。

(1)国内法における取り扱い

 役員報酬は上記給与、報酬、年金(12号)に該当します。ここで「国内において」行う勤務に該当するかの解釈が問題となりますが、判断基準となるような明確な法令・通達等はありません。なお、国外勤務に関しては、所得税法161条1項12号、所得税法施行令285条1項1号、所得税基本通達161-42、43、タックスアンサーNo.1929等が参考になります。

(2)
租税条約の適用

 日本が締結している租税条約のほとんどは、OECDモデル条約に近いものとなっています。OECDモデル条約においては、役員報酬については、法人の居住地国に課税権を認める内容になっています。そのため、源泉徴収を不要にできるケースは稀であると考えられます。

5 租税条約に関する届出書の提出

(1)
提出方法

 税務署への届出は書面だけでなく、e-Taxからの提出が可能です。

(2)添付書類

 当該非居住者がどの国に居住しているかによって、必要となる添付書類が変わります。特に、新しいタイプの租税条約(特典条項のある条約など)を締結している相手国に居住する場合は、「特典条項に関する付表(様式17)」および相手国権限のある機関が発行する「居住者証明書」の添付が別途必要になります。

執筆:西原孝高税理士/監修:秋山高善税理士

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