米国不動産投資と日本での確定申告
2026/02/24
【はじめに(対象者)】
今回は、給与所得者の高所得層の節税対策として関心が高くなっている「米国不動産投資」に関して、令和2年度の税制改正の内容を確認し、確定申告における注意点を簡単に確認したいと思います。
【令和2年度税制改正内容の確認】
日本の税制では、海外不動産の建物部分について減価償却費を計上し、不動産所得が赤字となった場合には、給与所得と損益通算をすることが可能です。また、米国不動産は中古でも建物価値の割合が高い傾向にあります。この点に注目し、令和2年度の税制改正前においては、国外中古建物の減価償却費を計算する際の耐用年数を簡便法(法定耐用年数の全部を経過した資産は「法定耐用年数×20%=見積残存耐用年数」とする方式)を使うことで、法定耐用年数を短縮して短期間に多額の減価償却費を計上することによって不動産所得が赤字となった場合、その赤字を給与所得と損益通算することにより、総合課税所得を圧縮することができました。この節税スキームに対して、令和2年度の税制改正により、①個人が取得した、②国外にある中古建物、③減価償却費を計算する際の耐用年数を簡便法で算定している、④減価償却により生じた不動産所得の赤字の額を、給与所得と損益通算できないこととなりました。
【改正後(令和3年分以降)の解釈】
改正後においては、対象となる「国外中古建物」とは、「個人において使用され、又は法人において事業の用に供された国外にある建物であって、個人が取得をしてこれを当該個人の不動産所得を生ずべき業務の用に供したもの(措法41の4の3②)」と定義され、「減価償却資産の範囲」は、「建物」と「附属設備」「構築物」「器具備品」を区別して規定していることから、これまでは「国外中古建物」一式として減価償却を行っていた資産を、建物本体と附属設備・構築物・動産(器具備品)に分けて、建物本体は原則法、それ以外は簡便法を適用することにより改正前と同様に早い段階で減価償却費を計上することができる「コスト・セグリゲーション」という手法が活用されています。
【確定申告における注意点】
確定申告における注意点としては、①為替レートの取り扱い、②減価償却費の計算、③外国税額控除の適用、④損益通算の適用があります。為替レートに関しましては、原則は取引日のTTM(電信売買相場の仲値)(所法57の3)によりますが、不動産所得等の金額の計算においては、継続適用を条件として、売上その他の収入又は資産については取引日の電信買相場、仕入その他の経費又は負債については取引日の電信売相場によることができるものとされています。減価償却費の計算に関しましては、米国は新品・中古を問わず同一の耐用年数となり、日米で異なる減価償却計算を行う必要があります。外国税額控除に関しましては、適用時期が外国税額を納付することとなる日で、米国での確定申告期限が非居住者は毎年6月15日であるため、日本と米国で同一年での適用を受けようとする場合には、更正の請求が必要となりますが、初年度の確定申告時に外国所得税が「0円」であったとしても、外国税額控除の繰越申告をすることにより、翌年の確定申告において外国税額控除の規定の適用を受けることが可能となります。だたし、日本での確定申告上、米国不動産の不動産所得が赤字となり、損益通算の適用を受ける場合には、外国所得が発生しないため、外国税額控除の適用を受けることはありません。なお、損益通算の適用に関しましては、確定申告をしないと赤字の通算・繰越ができません。
【最後に】
今回は、米国不動産を所有している場合の確定申告における注意点をまとめてみましたが、売却・相続に関しても日米での申告と納税が必要になり、より複雑な手続きとなりますので、米国不動産の購入にあたっては、短期的な所得税の節税だけでなく、将来的な出口戦略を含めての検討が必要と思われます。
執筆:村田 光央 税理士/監修:梶田 義孝 税理士
