完全子法人株式等に係る配当金の源泉徴収義務の免除
2026/08/25
Ⅰ 改正の経緯
令和元年度決算検査報告で会計検査院は次のような趣旨の報告をしました。「源泉徴収制度は、所得税を効率的かつ確実に徴収するなどの趣旨から設けられたもので、所得税又は法人税の前払的性質を持つ一方で、原則として全額が益金不算入の対象となる完全子法人株式等及び関連法人株式等に係る配当等の額に対して源泉徴収を行っているが、そこでは還付事務が生じやすく、これらに係る配当等については、源泉徴収制度の趣旨に必ずしも沿ったものとはなっていないのではないか」との指摘が行われました。これを受けて政府は令和4年度税制改正おいて完全子法人株式等及び関連法人株等に係る配当等については、源泉徴収義務を免除する旨の改正を行い、令和5年10月1日以降から施行されました。
Ⅱ 改正の内容
1.完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例の創設
一定の内国法人が支払を受ける配当等で次に掲げるものについては、所得税を課さない(源泉徴収義務が免除される)こととされました。
イ)完全子法人株式等に該当する株式等(その内国法人が自己の名義をもって有するものに限る。下記ロにおいて同じ)に係る配当等
ロ)基準日等においてその内国法人が保有する他の内国法人(一般社団法人等を除く)の発行済株式等の総数等に占める割合が3分の1超である場合における当該他の内国法人の株式等に係る配当等
ここで完全子法人株式等(持株割合100%)とは、法人税法23条(受取配当金の益金不算入)第5項で規定する株式等をいい、配当等の計算期間の全期間を通じて完全支配関係がある必要があります。一方、上記ロは法人税法23条第4項に規定する関連法人株式等とほぼ同じですが、継続保有要件がなく配当等の支払基準日において、発行済株式等の3分の1超を直接保有している場合の当該株式をいいます。つまり上記ロの保有割合の判定はその配当等に係る基準日等の一時点で行うこととなります。これは、源泉徴収段階で源泉徴収義務者がその判断を行う必要があるためです。
また、この規定は「自己の名義をもって有する」株式等でないと適用されません。つまり内国法人が自分自身の名義で株式を持っている場合をいい、たとえ経済的には完全子法人株式等(実質100%保有)であっても、自己の名義で有していないものはこの特例の対象から外れてしまいます。
受取配当金の益金不算入額の計算では計算期間全体を通じた継続保有期間が別途要件とされていますが、源泉徴収の免除は基準日等の一時点での判定ですので判定基準が異なる点に注意が必要です。ともあれ、この改正によりグループ企業間での配当に伴う源泉徴収の手間や、受領側での還付申告の負担が解消されました。
2.支払調書の提出不要
完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例に該当する配当を支払った場合、支払法人側では支払調書の提出は不要とされています。
Ⅲ 設例
A社に発行済株式の80%を保有されている法人が、1000万円の配当金を支払うとき、A社とそれ以外の株主対する源泉徴収事務は次のようになります。
A社に80%を保有されているので、関連法人株式等の配当金となり、御社において源泉徴収義務が免除され、800万円全額を支払うことになります。
一方、A社以外の株主は関連法人株式等には該当しないため、総額200万円の配当金から、20.42%の源泉所得税を引いた1,591,600円を支払い、408,400円の源泉所得税を支払月の翌月10日までに納めることになります。
<参考文献>
改正税法のすべて(令和4年度版) 一般財団法人大蔵財務協会 P87・88
法人税法23条第4項・第5項
法人税法施行令第22条第1項
法人税法施行令第22条の2第1項
所得税法第177条
所得税法第212条第3項
所得税法施行令第301条第2項
所得税法施行規則第83条第2項第5号
執筆:横田 崇 税理士/監修:石井 克美 税理士
