金地金等の仕入れ等を行った場合の消費税の取扱い
2024/09/25
1.はじめに
近年、金の取引価格が上昇傾向にあります。1年前の同じ時期と比較しても、2,000円近く上昇しています。そのような中、令和6年度税制改正において、金地金の取引を行った場合における消費税の取扱いについて改正が行われました。
ここ最近でも、令和2年度税制改正において、金の売買を繰り返すことによって課税売上割合を上昇させることが問題となったこともあり、金地金を取引することによって課税売上割合を上昇させる行為についてメスが入ったばかりです。
本稿では、令和6年度税制改正によって、金地金等の取引を行った場合の消費税の取扱いについて整理しておきます。
2.従来の高額特定資産に係る取扱い
高額特定資産とは、棚卸資産又は調整対象固定資産であって、当該資産の課税仕入れに係る支払対価の額(税抜価額)が、一の取引の単位(通常一組又は一式をもって取引の単位とされるものにあっては、一組又は一式)につき、1,000万円以上のものをいうとされていました(消令25の5)。
事業者が事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けていない課税期間中に、そのような高額特定資産の課税仕入れ又は高額特定資産に該当する課税貨物の保税地域からの引取りを行った場合には、当該高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の翌課税期間から当該高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、事業者免税点制度が適用できません(消法12の4)。
他方、そのような高額特定資産の仕入れ等を行った場合には、当該高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から、同日以後3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間は簡易課税制度選択届出書が提出できません。また、事業者が当該高額特定資産の仕入れ等を行った課税期間中にすでに簡易課税制度選択届出書を提出していても、提出していなかったものとされます(消法37③④)。
3.改正後の取扱い
事業者の課税期間中の金地金等の仕入れ等の税抜価額の合計額が200万円以上となった場合は、高額特定資産を取得した場合と同じく、事業者免税点制度の適用及び簡易課税制度選択届出書の提出を制限されました。
なお、ここでの金地金等とは、①金又は白金の地金、②金貨又は白金貨、③金製品又は白金製品(金又は白金の重量当たりの単価に重量を乗じて得た価額により取引されるものに限るものとし、当該事業者が製造する製品の原材料として使用されることが明らかなものを除く。)と規定されています(消法12の4③、消規11の3)。
したがって、それらの金地金等を課税期間中において税抜価額で200万円以上の仕入れ等を行った事業者は、翌課税期間から課税事業者となるか、本則課税で仕入控除税額を計算することとなります。200万円の判定については、判定対象となる課税期間が1年に満たない場合には、当該課税期間の月数で除し、これに12を乗じて計算します。また、月数は、暦に従って計算し、1月に満たない端数があるときは、切り捨てます。
なお、この改正は令和6年4月1日以後に事業者が行う金地金等の課税仕入れ及び金地金等に該当する課税貨物の保税地域からの引取りについて適用されます(改正法附則13④)。
4.まとめ
税抜価額で200万円以上の金地金等を仕入れ等した事業者は、当該金地金等の仕入れ等を行った課税期間の翌課税期間から当該金地金等の仕入れ等を行った課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間は免税事業者になれません(消法12の4③)。
同様に、事業者が事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に金地金等の仕入れ等を行った場合には、当該金地金等の仕入れ等を行った課税期間の初日から同日以後3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間について、簡易課税制度選択届出書を税務署長に提出しているときは、その届出書の提出はなかったものとみなされ、簡易課税制度が適用できなくなります(消法37③五)。
以上から、これまでの事業者免税点制度の判定に加えて、200万円以上の金地金等を仕入れ等した場合にも翌課税期間から課税事業者となることになるので注意が必要です。また、簡易課税制度についても同様の措置となっていますので、申告の際には注意が必要です。
なお、今回の改正は、免税事業者又は簡易課税適用事業者となる直前期に仕入れ等した場合をターゲットとしているので、例えば、免税事業者が改正前から保有している金地金等を売却して年間200万円以上となった場合については適用されません(消基通1-5-22の2(3)、簡易課税制度の場合は消基通13-1-4の3)。
執筆:秋山 高善 税理士/監修:栗林 秀幸 税理士