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相続・事業承継Vital Point of Tax

コロナ禍でもM&Aに前向き 買収先は小規模企業が7割 日商アンケート

2021/04/19

 新型コロナの影響を受けて売上が減少している企業ほど、事業承継の予定時期を後ろ倒しにしようとする傾向がうかがえるが、その一方で、コロナ禍でもM&Aの買収戦略について前向きな姿勢を維持しているに検討する事業者も多い――。

 これは、日本商工会議所がさきごろ公表した「事業承継と事業再編・統合の実態に関するアンケート」の調査結果で報告されたものだ。

 今回のアンケートは、事業承継の現状とコロナ禍の影響などについて調査が行われている。まず、経営者の年齢別に後継者決定状況をみると、60歳をひとつの節目として後継者を決めているケースが多く、特に経営者年齢が60歳以上の企業において、2017年時点では「すでに後継者を決めている」が49.3%だったが、2020年では52.6%となり、約3年間で3.3ポイント増加していることが分かった。

 しかし、その一方で、後継者が決まっていない経営者は60歳代で2割弱、70歳以上でも1割強となっている。また、「後継者を決めていないが事業継続したい」、「自分の代で廃業する予定」と回答した後継者不在企業は約2割で、その直近利益を見ると、黒字が約半数を占めており、収支トントンと合わせると約7割にも及んでいる。こうした状況から、今後、黒字企業であっても後継者不在のために廃業に至ってしまうケースが増加する可能性が高く、事業引継ぎ(M&A)の促進が重要だと指摘している。

 親族外承継の割合では、2代目以降の現経営者と先代経営者との関係について事業を引き継いだ時期で見ると、2000年代から「役員・従業員から登用」、「社外からの登用」といった親族外承継が増加し、2010年以降は2割に達している。

 ただ、企業の事業承継にも新型コロナの影響が及んでおり、新型コロナによって売上が減少している企業ほど、事業承継の予定時期を後ろ倒しにしようとする傾向があるようだ。今後、コロナ禍の影響が長期化して企業の業績が大きく落ち込む状況が続けば、事業承継が遅れる企業がさらに増えることが懸念される。

 事業承継の障害・課題をみると、「後継者への株式譲渡」が約3割で最も多く、後継者へ株式譲渡を行う際の障害は、「譲渡の際の相続税・贈与税が高い」が約7割、「後継者に株式買取資金がない」が約6割となっており、税制面および資金面がボトルネックとなっていることが浮き彫りとなった。

 M&Aの実施状況を見ると、「過去に買収を実施・検討した」企業は全体で約15%だが、売上高10億円超の企業では「買収を実施・検討した」ところが4割弱となっており、地域の中核的な中小企業においてM&Aが活性化している。その買収先だが、後継者難が深刻化している小規模企業(従業員20名以下)が約7割を占めており、M&Aが後継者不在企業の事業継続の受け皿となっていることが分かった。

 買収の目的としては、「売上・市場シェアの拡大」が約7割、「事業エリアの拡大」が約4割となっている。コロナ禍による買収戦略の変化については、「積極的に検討」(9.3%)「コロナ前後で変化なし」(57 .6%)が約7割を占めており、コロナ禍でもM&Aに前向きな姿勢を維持しているところが多かった。

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