第3回:非上場会社における種類株式の取扱い
2021/05/17
1.種類株式とは
株式の有する権利内容は原則として同じですが、会社法では権利内容が異なる複数の株式を発行することができるとされています(会社法108条第1項)。具体的には、受け取る配当の金額や行使できる議決権の内容等について、ある株式は配当を多くもらえる、ある株式は議決権が制限される等、株式間で差をつけることができるということです。
このように複数の種類の株式を発行した場合の各株式のことを種類株式といいます。会社法108条第1項では、株式間で異なる定めをすることができる事項として、以下の9つの事項を定めています。
①剰余金の配当
②残余財産の分配
③株主総会において議決権を行使することができる事項
④譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること
⑤当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること(この種類の株式を「取得請求権付種類株式」といいます。)
⑥当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること(この種類の株式を「取得条項付種類株式」といいます。)
⑦当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること(この種類の株式を「全部取得条項付種類株式」といいます。)
⑧株主総会において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの(この種類の株式を所有する株主は,株主総会や取締役会の決議に対して拒否権を持ちます。したがって、この種類の株式を別名「黄金株」「拒否権付株式」といいます。)
⑨当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること
2.種類株式発行のための手続
(1)定款変更
種類株式を発行するためには、定款に種類株式を発行する会社であると定める必要があり、また、種類株式の内容に応じて、会社法108条第2項各号に定められている事項についても定款で定める必要があります。例えば、剰余金の配当に係る種類株式を発行する場合には、当該種類株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件、その他剰余金の配当に関する取扱いの内容を定めるものとしています。なお、定款変更は株主総会の特別決議事項であるため(会社法309条第2項11号)、3分の2以上の同意が必要となります。
(2)登記
種類株式の内容については登記が必要です(会社法915条第1項、911条第3項7号)。なお、新たに種類株式を発行するのではなく、既に発行されている株式をその株式とは異なる種類の株式に変更(転換)する場合等には、株主平等の原則の観点から、登記実務上、不利益を受ける株主の同意が必要とされており、登記手続を行う際には、登記実務上、それらの株主全員から同意書を入手することになります。
(3)種類株式の相続税評価上の留意点
種類株式の税務上の評価については、国税庁より「種類株式の評価について(情報)」(平成19年3月9日)が公表されていますが、すべての種類株式の評価方法が明示されているわけではありません。各種類株式の内容に応じて、評価方法が異なる可能性もあるため、慎重な判断が必要です。
【今回のまとめ】
会社法では,株式会社が,剰余金の配当など9種の事項について異なる定めをした内容の異なる複数の種類の株式を発行することを認めており、この株式を「種類株式」といいます。上記2のとおり、種類株式の内容は商業登記簿謄本に記載されることとなり、外部からも内容を把握することができる点には留意が必要です。
(税理士法人タクトコンサルティング 税理士・公認会計士 小野寺太一)
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