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会社の商業登記手続と税務手続との関連性

2024/03/28

1.はじめに
 会社の商業登記手続については、司法書士が専門とするところであり、その登記手続に伴い、税理士としては税務手続が発生する関係であります。その代表的な税務手続として、内国普通法人等の設立の届出が「その設立の日以後2月以内」(法人税法148条)と規定され、会社の設立が要件とされており、会社は「その本店の所在地において設立の登記をすることにより成立」する(会社法49条)と規定されているように、登記が要件となっています。
 すなわち、会社の商業登記手続と税務手続の関係において、税務手続のみが発生することはなく、ある税務手続を取り消すためには、その原因となった登記手続を取り消す必要があり、今回そのような経験をしましたので、ここに簡単にまとめてみたいと思います。

2.経験事案
 【事案】:関与先の相続対策として、先代の父が会社に貸し付けている金額の一部を資本金に振り替えるDESを提案し、資本金の額を変更する登記が完了後、そのDESが非適格で、債務免除益が発生し、法人に納税が発生することが判明。
 
 【状況】:登記完了後、税務署へは異動届出書を提出済だが、事業年度は終了していない。
 
 【対応】:所轄税務署で登記が抹消されれば、提出済の異動届出書については、取下書で対応可能な旨を確認したうえで、司法書士が法務局で登記の抹消手続を申請。
 
 【結果】:法務局で、抹消登記が認められ、税務署へ取下書を提出し、増資の取消しが完了。

 【検討】:抹消登記の理由としては、「株主」に錯誤があったことと、株主になっていから1年も経過しておらず、権利も行使していないことから認めてもらうことができた。また、税務上も事業年度内ということで、納税額が確定する決算日には、登記が抹消済であった。

3.登記手続の更正と抹消登記
 2.では、抹消登記で対応をしたが、一般的な登記手続に関して、税務手続の修正や取消しをしたい場合には、その登記手続の更正もしくは抹消登記が必要となり、ここでは、登記手続の更正と抹消登記の確認をしてみたいと思います。

(1)登記の更正(商業登記法132条)
 更正とは、登記した内容が初めから間違えていた場合を指し、「登記に錯誤又は遺漏があるときは、当事者は、その登記の更正を申請することができる」とされており、主な例としては、①会社名を間違えた、②本店の住所を間違えた等、登記した内容が明らかに間違えていた場合が該当し、更正登記を行った場合でも、もとの登記は記載されたままとなりますが、税務上も税額の計算等に影響が生じない内容になると思われます。

(2)登記の抹消(商業登記法134条)
 登記の抹消とは、登記した内容を抹消することで、一定の場合には、「その登記の抹消を申請することができる」とされており、税務上の税額計算等にも影響があると思われる登記に関しては、登記の抹消が必要になります。
 また、一定の場合とは、「登記された事項につき無効の原因があること。ただし、訴えをもってのみその無効を主張することができる場合を除く。」とされており、「訴えをもってのみ主張することができる無効」としては、会社法第828条が会社の設立等13個を列挙していますが、そもそもの決議機関の不存在確認や無効確認については、訴えをもってのみ無効を主張できる場合に含まれないとされており、第132条第2項「錯誤又は遺漏があることを証する書面を添付しなければならない。」を準用し、登記を抹消できる場合があり、実務的には、こちらの規定での「登記の抹消」をすることになると思われます。

4.最後に
 税務上の税額計算に影響がある登記をした場合で、その登記の取消し等を行う場合に税理士として検討が必要な登記は、「登記の抹消」手続になると思われます。
 その際には、「錯誤又は遺漏があること証する」がポイントになると思われ、税額計算に影響がある錯誤無効が認められた重要な判例としては、最高裁(最判平成元年9月14日・判時1336号93頁)(離婚による財産分与に対して譲渡所得税がかかることがわかり、錯誤無効を主張した事例)がありますが、本件において「通常の一般人にとっては、重大な過失があったと認めることはできない」とされており、私が経験した登記の抹消手続に関しても、「株主」に「錯誤」があったために、「登記の抹消」が認められました。
 ただし、税額計算に影響がある登記に関して、税理士が関与している場合、同様に「錯誤又は遺漏」が認められるかには検討の余地があり、税理士として関与する商業登記手続には細心の注意を払う必要があるのではないでしょうか。

執筆: 村田 光央 税理士/監修:梶田 義孝 税理士

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