法人契約に関する生命保険協会からの新たな注意喚起について
2025/06/25
令和元年の法人税基本通達9-3-5(定期保険及び第三分野保険に係る保険料)の見直しや同9-3-5の(定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い)の新設とそれに伴う個別通達の廃止、令和3年の所得税法基本通達36-37(保険契約等に関する権利の評価)の改正により、法人契約の生命保険税務の取扱いについては、かなり理解が進んできたと思っていました。しかしながら、令和6年6月24日、生命保険協会は「通達に取扱規定のない法人契約の養老保険・個人年金保険に対する国税庁からの注意喚起」を生命保険各社に伝えました。
問題となったのは、法人契約の養老保険・個人年金保険で、満期保険金または年金の受取人が被保険者で、死亡保険金受取人が法人となっている、最高裁平成24年1月13日(第二小法廷判決・民集66巻1号1頁)等で問題となった、いわゆる逆ハーフタックスプランと言われた契約形態の保険料の取扱いについてでした。
この受取人形態は、養老保険の保険料に関する法人税基本通達9-3-4(養老保険に係る保険料)に規定がなく、同9-3-4(3)の類推解釈で、法人の支払う保険料の2分の1を支払保険料として損金算入、2分の1を貸付金または給与として処理していました。また、個人年金に関しては個別通達(法人が契約する個人年金保険に係る法人税の取扱いについて、平成2年5月30日直審4-19(例規))にも規定はありませんでした。上記最高裁判決により、新規の保険販売は自粛されたものの、保険約款上の権利として、契約成立後の受取人変更をすることにより、販売が続いていたようでした。
今回問題として例示されたのは、「独自の解釈により通達を類推適用」して、「通達に規定がないので、法人税法の趣旨に則り、法人が保険料を支払った時点では被保険者に対する経済的利益は発生しておらず、支払保険料は全額損金算入できる」としたものでした。しかも、養老保険だけでなく個人年金についても同様の解釈をして、支払保険料を全額損金算入したものを税務調査時に否認されたものでした。
今回の注意喚起では、通達に規定のない今回のような場合、解決策として「法人が支払った保険料は資産計上」「受け取った役員は給与所得として課税」とすることが示されています。今後、通達改正の形でこれらの取扱いを明文化してほしいものです。
同時に、税理士としては、法人契約の保険料の経理処理だけでなく、保険金支払や契約者変更の場面においても、より一層その経理処理の根拠を確認して、明らかでない場合は所轄税務署に確認を求めることが必要になると思われます。
執筆:追中 徳久 税理士/監修:滝口 利子 税理士